いつもGAINAX NETおよび「のーてんき通信 DAICON3の思ひ出」をご愛読いただき、ありがとうございます。
武田の思い出話を楽しみにしてる皆さまには申し訳ないのですが、今回と次回はDAICON3の後に作られた『DAICON FILM』※の4つの作品をご紹介します。当時のスタッフたちの雰囲気が少しでも伝われば幸いです。
今回は『快傑のーてんき』『愛國戦隊大日本』の2本をお送りします。
※DAICON FILMとは
1981年に大阪で開催された日本SF大会DAICON3と、1983年に開催された同大会DAICON4の間に作られた自主制作映画のグループです。同じ頃に作られたSF専門ショップ「ゼネラルプロダクツ」や、のちに立ち上げられた弊社ガイナックスのスタッフが多数参加していました。『快傑のーてんき』
- 「快傑のうてんき」 ―危うし少女、メカケの恐怖―
- 1982年8月完成/ビデオ作品/上映時間約15分
- 「快傑のーてんき2 純愛港町篇」
- 1984年3月完成/8ミリフィルム作品/上映時間約22分
- 「快傑のーてんき in USA」
- 1984年6月完成/ビデオ作品/上映時間約4分
- 「ロールプレイングのーてんき in ソウル」
- 1988年8月日本SF大会MIGCONにて上映/ビデオ作品
東映のヒーロー物「快傑ズバット」をモチーフとしたビデオ作品。
当時グループのリーダーだった武田康廣のキャラクターを全面に押し出した、短いながらもインパクトのある怪作です。当初主演を嫌がっていた武田をよそに、同タイトルで4本のエピソードが作られました。『映像作品を2本同時制作する合間を縫って「息抜きに」もう一本作ってしまった』という1作目の制作裏話に、当時のスタッフたちのバイタリティが感じられます。
「危うし少女、メカケの恐怖」
さすらいの私立探偵、早川健は、親友の飛鳥五郎を悪の組織バッカーに殺害された過去を持つ。飛鳥を殺した犯人を探し、彼は今日もさすらい続けるのだ。さすらいのさなかに立ち寄ったとある町で、早川はヤクザにからまれていた姉弟を助ける。姉の名前はユリ、弟の名前は太郎。ユリをメカケにしようとする市会議員・黒川(実はバッカーの幹部M)の嫌がらせだった。ユリを手に入れるため、新たにヤクザの沢村と刃物使いの用心棒”ヤッパのジョー”を差し向ける黒川。早川は彼女を守るためにジョーと対決し、「ナイフ投げ勝負」で見事に勝利する。しかしその直後、早川は沢村とその手下たちの銃弾に倒れ、ユリは男たちに連れ去られてしまう。彼女はこのまま黒川のメカケにされてしまうのか? 危うし、ユリ!
その時、バイクの爆音とともに桃色のスーツに身を包んだヒーローが姿をあらわした!!
「純愛港町編」
早川は可憐な花売り・ゆかりに出会う。ゆかりの美しさに目をつけたバッカーの死神伯爵が手下を使い彼女をさらおうとするが、早川に助けられことなきを得る。自分を助けてくれた早川に感謝するゆかりとの交流は、さすらいの旅を続ける早川にひとときの安らぎをもたらすのだった。しかしなんという運命のいたずらか、ゆかりのかつての恋人は、バッカーとのーてんきの熾烈な戦いに巻き込まれ命を落とした男だったのである!
新たに現れた死神伯爵の手下に捕らわれるゆかり。死神伯爵に呼び出された早川に、悪の科学者ドクトルマッドが作ったメカのーてんきが戦いを挑む! 強敵・メカのーてんきに、のーてんきは勝てるのか? 捕らわれたゆかりの運命は……?
「のーてんき in U.S.A」
さすらい続ける早川健の旅路は、はるか海を越えアメリカはロサンゼルスまで伸びていた。チャイニーズシアターの前でものーてんきの勇姿はひときわ映える。そんな異国の街角で、金髪の少女を暴漢から救う早川。感謝のキスを浴びた早川は、またはるかなさすらいの旅へと戻っていくのだった……。「ロールプレイングのーてんき in ソウル」
1988年に群馬県で行われた第27回日本SF大会・通称MIGCONで上映された、観客の選択でストーリーが変わる異色のインタラクティブムービー。特殊な形態の上映ゆえ、その後見る機会がほとんどなくなってしまった幻の作品。「のーてんき」 ~よもやま話~
- 「快傑ズバット」を元にした作品を作ろうと言い出したのは、ズバットのファンだった”オタキング”こと岡田斗司夫氏。主演に武田を推したのは、赤井・澤村といったDAICON FILMの中心だった面々でした。武田の”のほほんとした顔立ち”を使わない手はないという理由だそうです。
- 1作目の監督がやたらと多いのは、撮影現場ごとに監督が変わっていたから。撮影や制作の経験をスタッフに積ませるためという目的もあったがゆえの珍事でした。
- 用心棒”ヤッパのジョー”を演じているのは赤井孝美。他の作品でも、DAICON関係者は悪役演技がはまる人が多いです。大阪の芸人気質ゆえでしょうか。
- 「純愛港町篇」で写真に早川と2人で写っている飛鳥五郎は岡田斗司夫氏。DAICON時代をよく知る人には「武田&岡田のツーショット写真というだけでかなり面白い」とか(当時のスタッフ談)。
- 「のーてんき in U.S.A」はワールドコンLA大会参加のため渡米した際に、ついでに撮影された作品。早川が助ける金髪少女を演じていたのは、武田夫人でSF作家の菅浩江さんです。つまり大がかりなのろけですね。
- 2001年に幕張メッセで行われた第40回日本SF大会では、武田本人によるのーてんきがコスチュームショウに登場! 当時3歳だった娘さんと親子共演のダブルのーてんきでした。
詳しいキャスト・スタッフなどの情報はこちらもご参照ください。
『愛國戦隊大日本』
1982年8月完成/8ミリフィルム作品/上映時間約19分1983年のSF大会「DAICON4」への立候補にあたって、プロモーションの一環でその前年に発表された作品です。
「スーパー戦隊シリーズ」をモチーフに制作された、オリジナル「戦隊ヒーロー物」アクション映画。悪の組織「レッドベアー」が送りこんだ怪人「ミンスク仮面」に対し、アイカミカゼ・アイハラキリ・アイスキヤキ・アイテンプラ・アイゲイシャ、五人の愛國戦隊が大日本ロボを駆って立ち向かいます。
タイトルやキャラクター名が表すとおり、右も左も等しく笑い飛ばすパロディ色の強い作品。爆発シーンや大日本ロボと巨大化怪人の戦いなど、素人ばなれした特撮も見所です。
「びっくり!君の教科書もまっ赤っか」
愛國戦隊大日本のリーダー神風猛は、常日ごろから肉体や精神の鍛錬を怠らない。トレーニングの合間に書店に立ち寄った猛は、店頭の書籍が全て「赤い」本にすり替えられていることに気付く。
デスマルクス総統率いる悪の組織「レッドベア-」の洗脳五ヵ年計画・教科書赤化作戦が開始されたのだ。
おりしも郊外の造成地では、行動隊長ツングースクキラーと怪人ミンスク仮面が戦闘員ハラショマンたちに教科書の運搬を指示していた。急行する愛國戦隊!! 変身した大日本とレッドベア-との壮絶な戦いの幕が切って落とされた!!
「大日本」 ~よもやま話~
- 大日本はスタッフ育成の目的もあり撮影された「のーてんき」とは違い、小道具・衣装・キャスティングなど細部までこだわって制作された作品です。アマチュアとは思えない爆発シーンにもスタッフのこだわりが見てとれます。
- 撮影されたのは、当時は空き地だった大阪大学医学部病院建設予定地や、大阪城公園・万博公園など。撮影中に見学していた人も多く、「放送はいつからやの?」などと聞かれることも。それに対し「来年4月からです」と適当なことを答えたDAICONFILMスタッフは、罪深いことをしたものです。
- 戦闘員ハラショマンの衣装は、一見大阪芸大のジャージに見えます。しかしよく見ると胸の表記が“大阪芸大”ではなく“大阪芸人”になってます。
- ナレーションは特撮スタッフでもある庵野秀明。某ジブリ作品に先んじること30年前、既にナレーションで声の出演を経験していたのでした。大日本ロボの中の人もしています。
- 大日本の主題歌は、某スーパー戦隊の主題歌のメロディにオリジナルの歌詞をのせた、いわゆる替え歌。この作品を見て以来替え歌の方が刷り込まれ、元の歌を歌えなくなる人が続出したとか。今でもカラオケで大日本バージョンを歌う人がたまにいます。やはり罪深い作品です、大日本。
- そのモチーフゆえ、本作品は「反社会主義」「右翼的」などと評されることもありました。作品をちゃんと鑑賞すれば、この作品はSFファンが好む「ナンセンス」な「バカ話」であることが分かるのですが、タイトルや概要だけ見た人には誤解されやすいかもしれません。制作されたのは東西冷戦の真っただ中、ロシアがソ連だった頃でありました。
「愛國戦隊大日本」メインスタッフ
- 監督 赤井孝美
- ゲーム「プリンセスメーカーシリーズ」、実写作品「大特撮巨編『ネギマン』」監督/小説「『星界』シリーズ」挿画等
- 特撮 庵野秀明
- 「トップをねらえ!」「ふしぎの海のナディア」「新世紀エヴァンゲリオン」監督等
詳しいキャスト・スタッフなどの情報はこちらもご参照ください。