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GAINAXアニメ講義第27回 「Q&A/最後に」|講師:今石洋之・村田康人 /特別出演:井関修一/ 司会進行:大塚雅彦
講義の最後はQ&A!数多く寄せられた質問、そのなかから4点をピックアップ。アニメの学校に行ったほうがいいのか?住んでいるところは採用に影響するのか?などなど、ひとつひとつお答えしていただきました。
※この講義は2011年4月、livedoor アニメ漫画ゲーム系ニュースサイト「Anigema〜あにげマ!〜」さんご協力のもとUSTREAMで配信した放送をテキスト化したものです。
8:Q&A
Q1:「今まで絵が好きで、描くということだけしてきました。動かすという作業はしたことがないのですが、こんな私でも専門学校に行かずアニメーターになることはできるでしょうか?やはり学校で学んだ方がいいのでしょうか。教えていただきたいです。」
大塚:今回は学校から放送を見てる方も多いかもしれないですけど、どうですかね。
村田:いくつくらいなんですかね。
大塚:年齢は書いてないですね。高校、もしくは大学生くらいかと。
今石:まあそんなこと言ったら、僕と井関君は専門学校行ってないですからね。なれますね。
大塚:なれますということで。
村田:なれると思いますけど、行っといたほうが楽かもしれない。
大塚:それは原画と動画の違いで説明してたような、線の描き方のこととかですね。
村田:あとは専門学校に行くと、色を塗ったり、今だったら撮影をやれたり、卒業制作で自分たちでアニメを作ったり、ということを一通りやってから来るんで、その方がいろんなことを知れるんで良いかなと思いますね。
大塚:今石君だって専門学校卒じゃないけど、自分で自主制作をやってたよね。
今石:やってましたね。
大塚:そういう、何かを作ったりした経験はあった方がいいですか?
村田:あった方がいいですね。
今石:経験があって損することは、決してないですね。だから、アニメーターになることはできるでしょうけど、何も知らないで入ってきちゃうと、なってからが大変かもしれないですね。
村田:僕らの頃は、地方にいるとアニメーターになるにはどうしたらいいか全然わかんなくて。アニメージュ(注1)が出始めたくらいの頃なんで、今みたいにアニメの雑誌もないですし。そうすると、とりあえず東京に出てアニメの専門学校に行くしかなかった。東京にしかそういう学校がなかったですし、それしか方法がなかったという感じですよね。それこそサンライズ(注2)がどこにあるかすら知らなかったし。今はネットでいくらでも情報が得られるから何とでもなるし、自分でパソコンで絵を描いて色を塗ってたりすると、その延長が仕上げの仕事だったりする。だからまあ、行ってなくても大丈夫かなとは思うんですよね。
Q2:「動画マン採用時に現住所は気にされますか?例えば九州在住として、ガイナックスに受かれば喜んで上京する、という方を採用することはありますでしょうか。やはり採用条件としては東京近辺在住の方が有利になってくるのでしょうか。」
村田:そんなことはないですね。中途半端に近い方が困る。 ガイナックスは三鷹にあるんですけど、本当に近所だったら大丈夫なんですが、千葉とか、神奈川とか八王子とかに住んでて、そこから通いたいとなると、ちょっと辛いかもしれないですね。
大塚:自宅があるし通えなくもないけど、通勤に1時間とか2時間かかるとなるとね。
村田:通勤で1時間や2時間、最初の頃にかけるのはちょっと辛いんで…っていう話はしますね。
大塚:ちなみに井関君は九州出身?
井関:そうですね。九州です。
大塚:ガイナも地方出身の人多いですよね。東京ばかりということもないですし。
村田:九州もいますし、北海道もいます。
大塚:もちろん自宅から通えれば家賃の問題とかを気にしなくていいので、そういう有利な部分がないとは言えないですけども。でも、それが絶対的なネックになるということはないですね。
以前、P.A.Works(注3)という富山のスタジオに見学に行った時も、地方だから富山付近の出身の方が多いのかと思えば、意外と全国から人が来ていた。やっぱりそのスタジオで働きたいということであれば、色んなところから人が集まって来るみたいです。なので、場所のことは大丈夫だと思います。
村田:終電のあるうちに帰れる仕事じゃないんで、終電が過ぎちゃったあとに帰らなきゃいけないっていう事態になったときに、千葉とかだと帰れなくなってしまうんです。でも、朝までスタジオにいたから次の日は遅く来ていいとか、休んでいいということでもない。できるだけ千葉とか神奈川に住んでる子でも、近所に引っ越して、歩いて通えるところに住んだ方が良いよ、とは毎回すすめます。
大塚:時間がもったいないですよね。僕なんかもスタジオが大きく引っ越したら、その度に引っ越ししますし。スタジオに泊まったりすると、なかなか疲れがとれないところもあって。なるべく家に帰って寝たいと思うんですけども、どうしても終電までに仕事が終わらないこともあります。通勤の条件で縛られることがちょっと辛いときはありますね。なので、自転車だったり、歩いて通える範囲内に引っ越したりして、なるべくスタジオから離れないようにしてるんですね。 経済的なことを考えないのであれば、スタジオの近くに住んだ方がいいとは思います。そういう意味では、ちょっと離れてるだけでも地方と同じ条件かな、という気はしますよ。歩いて10分のところに自宅があったとか、そういうラッキーな人も中にはいますけども、まあそれはレアなケースで早々あることではない。自分がどこに住んでいるかということはあまり気にしなくて良いかなぁと思います。
Q3:「歩きや振り向きなど、基本的な課題以外に何か面白い課題、良い練習方法など、ご存知でしたら教えていただけないでしょうか。また、専門卒と大学卒の新人の違いや傾向などもありましたら教えて下さい。」
大塚:これは先週も村田さんがおっしゃってましたけども、いろんな角度とか、空間込みで人を描いた方がいいですね。
村田:そうですね。その方が良いと思います。
大塚:それ以外にもありますか?アニメの動きのことなのかな、と思いますけど。
村田:動きのことは、入ってからでいいんじゃないですかね。
大塚:基本的な画力をあげておけばいいという感じですか。
村田:それでいいと思いますね。
大塚:専門卒と大学卒の違いみたいなのはありますか?入ってきた人の傾向というか。
村田:いや、特にないと思います。結局は、その人がどういう人かだと思うんで。特に大学出身だからこういう傾向があるとか、専門学校の出だからこうだ、というのはないです。
大塚:個人個人の差の方が大きいですよね。
村田:そうだと思いますね。
Q4:「絵を描くのが好きで、将来はアニメの仕事に就きたいのですが、美大に行きたいとも思っています。前回、アニメーターになるならなるべく早く現場に入った方がいいということをおっしゃっていましたが、美大に入ってからアニメーターになるのは、やはり回り道になってしまうのでしょうか。今石監督は美大のご出身ということもあって実地的な意見を頂けると嬉しいです。」
今石:僕は、結果論としては遠回りしたのが、後ですごく良かったと感じたんですけどね。ただその分、入ったときの出遅れ感といったらすごくってですね。
大塚:同期がもうちょっと若かったりするんですか。
今石:ええ。だから、入ってからそれなりに焦ることにはなるんですけど。ただ10年20年先を考えたら、ちょっと寄り道してその空気を吸っておいたほうがいいこともある。まあそれも、その人がどういう方向に行きたいかにもよるので、わからないですけどね。絵一筋!だったら絵を一枚でも多く描く方がいいのかもしれないし、演出になりたいんだったら別の人生経験を積んだ方がいいのかもしれない。
僕は、入ったとき同世代に吉成さん(注4)がいたんです。それで、僕が動画の研修をしているときに吉成さんは『エヴァンゲリオン』でメカ作監やってるんですよね。差がありすぎて、もう比較すらできないくらい…焦るってレベルじゃないですよ。そういう中でもやってかなきゃいけないというリスクは当然出るんですけどね。
村田:僕は高校を出て、4年間大学に行って時間潰すのは勿体ないと思って専門学校に行ったんです。でも後になって考えると、4年間何もしないで遊んでることも必要だったんじゃないかなぁ、とも感じたんですよね。どっちが良い悪いというのは何とも言えないんだけど。美大に行けるなら行ってからでも遅くはないかな。美大に行くことによって25歳くらいになっちゃうとさすがにちょっとまずいかもと思うけど、22歳で卒業してこれるんだったら別にいいんじゃないかと思います。美大に行ってつまんなくて、2年くらいで辞めちゃってから来ても問題ないだろうし。中退だからって、別にこの業界は気にしないですから。
今石:何の関係もないですからね。
大塚:本当、経歴や学歴みたいなものは関係ないです。色んな人がいますもんね、アニメーターの中にも。
村田:うちには中卒で専門学校行って来た子もいるし、高卒で来てる子もいるし、自衛隊に1回行ってから入った人もいますし。色々ありますね。
大塚:井関君は大学行ってから入ったんだよね。
井関:はい、大学行ってからですね。しかも2浪してから来たんで。それこそ今石さんが言ったように出遅れ感がすごくあって、同年代でもうすでに原画マンとして活躍されてる先輩方とかがいらっしゃるんで悔しいというか…。
村田:年下でも原画マンになってる人いるもんな。
井関:そうですね。なので、内心すごく焦ってます。でも、先のことはわからないんで。すぐに原画マンになれるかもしれないし、なれないかもしれない。今は自分の目の前に置かれている仕事をとりあえずこなすしかないのかな、と割り切って仕事をしてます。
今石:俯瞰できる状態じゃないもんね。「あのとき大学行っててよかったぜ!」っていう状態じゃないよね、まだ。
村田:俺は大学行っててもいいと思うんだけど。
今石:行ける選択肢があるなら行った方がいいと思いますけどね。
村田:4年間遊んでるっていうのも大切だよ、たぶん。まあそれは後になってから思えてくるんだけど。大学に行って、色んなことを経験しておいた方がいいとは思いますね。
大塚:僕はアニメーターではないんですけども、そういう意味ではもっと遠回りしていますよ。大学に行って、さらに実写を数年やってからアニメの世界に入ったんで、僕がアニメを始めたのって28歳なんですよね。業界に入った年齢という意味ではかなり遅いんです。アニメの世界ではまったく新人ですけど、逆に、実写の世界で経験したことが、アニメしか知らない他の人には知りえない武器にできたというのもありました。ただ勿論、アニメだけをずっとやってきた人には、経験を積み重ねてきたという利点もあるし。それは多分、人それぞれかなあと思うんですよね。それでも、10代でやることは、年を取ってからやることと全然違うというか、10代の経験っていうのはすごく貴重だと思うんですよね。 どういう選択をするのかは、自分自身でちゃんと考えて、やりたいことをやった方が良いかなと思います。他人がどうだ、というのは参考にはなるかもしれないですけど、最終的には「自分はこういうことをやりたいんだ」と思うことをやっといた方が、あとから後悔するようなことは少ないと思う。色んなことをやってると、それが多少遠回りに感じるかもしれないですけど、結局は自分の資源になってくることもあるし。本気でやっていれば、村田さんがおっしゃってたように、遊んでいることすら財産になる。そのあと、それをどうやってやりたいことに結び付けていくかというのは、自分次第というところはあると思います。なので、必ずしも「こうした方が良いよ」ということはないと思いますが、自分がやりたいと思うことがあるのであれば、それを経験してからでも大丈夫かなと感じます。まあ、限度はあるかもしれないですけど、数年くらいの回り道だったら、全然大丈夫だと思います。
9:最後に
大塚:あんまり知られていない、原画と動画の違い。また、アニメーターになるにはどうしたらいいか。そして、アニメーターの実際の仕事を現場からの視点で語ってもらいました。アニメ業界を目指している人にとって参考になったらいいなと思いますし、普通にアニメを見ている人にとっても、アニメに対する新しい視点ができるきっかけになってくれたらと思います。
最後に、何か一言ずつありますか?
今石:前に村田さんが言ってたことが一番大事だと思うんですよね。「とりあえずやってしまえ」ってことだと思うんですよ。このUstreamの配信を見ている暇があったら、アニメーターになった方が良い。見て、「どうしよっかな」って悩む暇があったら、なってから考えればいいと思います。 たぶん、すごくハードルが高いと感じているから、こういうものを見て入り方を知りたいんだと思うんですけど、そんなに高いハードルではないと思うんですよね。だから、悩む間にやってしまえばいいと思うんですよ。 「まだ卒業してないし」とか「まだ上京できないし」と思うんだったら、家でアニメを作ればいいんですよ。その間は、自分はアニメーターなわけで。雇われていないだけのアニメーターだから。
とにかくやればいいっていうことかな、と思います。
井関:自分は、1年前までは、この配信を向こう側で見てるユーザーさんたちと同じ立場でした。アニメのアの字も全然知らない状態で入ってきたんで、自分が未だに1年やり続けられてることに驚きます。それでも、「やってて楽しい」と思っているんで。
やりたいと思う気持ちが本当にあるのであれば、たぶん誰でもなれるんじゃないかなぁと、僕は思います。
村田:絵を描く仕事で一番手っ取り早くなれるのはアニメーターなんじゃないかなと思います。少ないですけども、毎月確実にお金は稼げるわけですから。絵を描く仕事としては結構いい職業なんじゃないかなと思います。 ここ何年か、面接をして話を聞いていると、アニメーターになりたいという人がどうも減っているらしくて。アニメの専門学校も、アニメーターの学科がどんどん減って、声優になりたい人の方が増えているらしいです。逆に言うと、今がチャンスなのかなと思います。アニメーターになりたい人が減ってるんだったら、今やればなれるかもしれない。だからと言って、皆が皆なれるわけではないんですけども、チャンスかもしれないとは思います。 だから、もしやりたいという気があるんだったら、どこの会社でもいいからとりあえず行ってみて、やらせてくれないかという話をしてみればいいんじゃないかなと思います。そんな感じですかね。
大塚:やはり皆さんおっしゃることは、「やってみろ」っていうことですね。色々考えるよりは、やってだめならその時考える、ということなんでしょうか。前回でも、会社の案内とかを調べて…という話はしましたけども、熱意があれば会社に持ち込んで、「見てください!」と言うことも可能だと思います。最低限のルールはありますけども、それを破ってでもやりたいという気持ちがあれば、それを突破する方法はいくらでもあるような気がしますね。それは行動力がネックだったりするんですけど。やらないことにはできないし、レールに乗っかるだけでも駄目なのかもしれないですね。みなさんが本当にやりたいのであれば、ぜひとも行動してください。 これをまとめにして、GAINAXアニメ講義 on USTREAM「アニメーターになるには」を終わりにしたいと思います。皆様、ご視聴ありがとうございました。
興味深い話が盛沢山だった【GAINAXアニメ講義 on USTREAM「アニメーターになるには」】、以上で終了となります。
皆様ありがとうございました!
(注1)「アニメージュ」/ 徳間書店発行の総合アニメ専門雑誌。
(注2)サンライズ / アニメ会社。代表作に『ガンダム』シリーズ 他
(注3)P.A.Works / アニメ会社。代表作に『Angel Beats!』 他
(注4)吉成曜 / アニメーター、アニメーション作画監督、アニメ演出。代表作に『新世紀エヴァンゲリオン』『天元突破グレンラガン』メカ作画監督、『グレパラ』「お前ら全員燃えてしまえっ!!!」監督、『Panty & Stocking with Garterbelt』作画監督・コンテ・演出 他
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