小説単行本
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表紙・背表紙図版とコメント

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プレシャス・ライアー
\476 ナカムラノリユキ
光文社 光文社文庫 2006/7/12 4-334-74092-8
プレシャス・ライアー文庫表紙 ノベルズ版はこちら
 解説が坂村健さん、というのが、たいへん嬉しい!
 TRONを開発なさった世界的な学者さんに引き受けていただけるなんて、SF作家冥利に尽きます。
 解説の内容も、著作者としては大変ありがたい「主眼はどこに」というもの。というわけで、分析的であるけれど軽妙な解説は、ノベルズ版所有者も必読。中で触れられた伏せ字の部分は、ノベルズ版の紹介のところをご参照ください。


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おまかせハウスの人々
\1500 装画・影山徹
装幀・泉沢光雄
講談社 2005/11/28 4-06-213149-8
おまかせハウス表紙 講談社の月刊小説誌〈小説現代〉に掲載していただいた短篇を集めました。
 日頃唱えている「中間小説誌にSFを」という言葉を、自分自身で実現でき、それを単行本に纏めていただけたのは本当に感無量です。
 食物汚染を扱った作品を執筆中、BSEには亜種がある、と書いたら、執筆終了後〜雑誌掲載されるまでのわずかな間に、本当に見つかってしまいました。う〜ん、予測が当たって嬉しいような、現実に追いつかれて悔しいような、複雑な気持ち(^^;)
 どの作品も、中間小説誌という媒体に発表したものなので、「近い将来に生活の中へ入り込む新製品、それにまつわる人間模様」という切り口です。SFに慣れない人にも薦めてみてくださいね。
▼収録作品▼  1)純也の事例 2)麦笛西行(むぎぶえさいぎょう) 3)ナノマシン・ソリチュード 4)フード病 5)鮮やかなあの色を 6)おまかせハウスの人々


NEW!
鬼女の都
\686 山田章博
祥伝社 祥伝社文庫 2005/09/05 4-396-33245-9
鬼女の都文庫表紙 ハードカバーノベルズ、そしてこの文庫、と、初めてフル・ラインナップを達成した作品となりました。
 しかも、やっと山田章博さんに描いていただけた! SF大会などでお目にかかるたびに、いつか一緒に仕事をしましょう、とおっしゃってくださっていたんです。ハードカバーは京極さん、ノベルズ版は(やはり京都在住の)藤原さん、文庫が山田さん……なんて幸運な作品なんでしょう。
 解説は、ハードカバー発行時に年間ベスト1に選んでくださっていたミステリ界のツワモノkashiba@猟奇の鉄人さんが引き受けてくださいました。ひたすら恐縮。
 さあ、みなさんもディープな「ミステリアス・京都」へお越しやす〜。


NEW!
五人姉妹
\700 中川悠京
早川書房 早川文庫JA 2005/01/10 4-15-030777-6
五人姉妹文庫表紙 親本はこちらです。
 ふわっと柔らかくて、みんな幸せそうな表紙が、もの悲しいけれどとっても素敵。
 解説は加納朋子さん。登場人物たちの名前についての考察は、八割がた正解です!


NEW!
夜陰譚
\514 装丁・井上佳子
装画・藤原ヨウコウ
光文社 光文社文庫 2004/09/20 4-334-73747-1
夜陰譚文庫表紙 ハードカバーと同じ表紙ですが、微妙に色とレイアウトが変わっています。ああ、なんて美麗な黒い本(うっとり)。
 このコーナーを編集していて、この本に入っている作品の多くが選抜アンソロジーに収録されていることに気が付きました。評判のいい短篇をぐっと集めたお得な本と言えるかも。
 解説は、畏れ多くもホラーの第一人者である岩井志麻子さんに書いていただきました。「女は怖いよシリーズ」と自称していた作品群なので、ぴったりそこに着目してくださっていて、とても嬉しかったです。


NEW!
永遠の森
\760 菊池健
早川書房 早川文庫JA 2004/03/10 4-15-030753-9
永遠の森文庫表紙 ハードカバー発表時には、「ベストSF2000」国内篇第一位第32回星雲賞日本長篇部門、そして第54回日本推理作家協会賞、と身に余る評価を戴きました。スガ作品の中でも出世頭と申せましょう。ありがたや、ありがたや。
 ミニチュア細工のように組み立てた九つのお話は、コンパクトな文庫サイズになると、「掌の上に物語世界が丸ごと載る」という別の愛おしさがあるように思います。


プレシャス・ライアー \819 高橋三千男
光文社 カッパノベルス 2003/06/195 4-334-07522-3
プレシャス・ライアー表紙 無謀にも〈週刊アスキー〉でパソコン関連のSFを連載しました。
 コンピュータはオリジナリティを持てるや否やを調べるためにVR世界を探索する金森詳子に、ソルト・ペッパー・シュガーなる謎の人格が接触してくる――。
 ユビキタス、次世代アーキテクチャなどのタームを盛り込み、中盤はネットバトルもあり、で、割合と派手な作りになっています。
 濃いSFファンの方々へのかっこ悪い予防線は、ここから→ 「××は○○だったのだ!」的オチに関しては、生意気なようですが、確信犯です(^^;) 『アイ・アム』のオチがそうであったように、これもまた私の主眼はそこにはなく、むしろ、作中に繰り返し出てくる「*は、ありやなしや」という観点からすると、ラストが△(たち)の告解である以上は敢えてコレでいくほうがいいのでは、と考えました。この敢えてという部分がうまく伝わっているといいのですが。このパターンの物語収拾処理を「◇◇が▽いている」と受け止められる危険性は判ってるの(;_;)……という弱気は、「著者の言葉」や作品に繰り返し出てくる*に対する見解、また具体的にはp63やp91で、前もってナニゲに表明しております(^^;)ゞ ←ここまで


歌の翼に
ピアノ教室は謎だらけ
\857 加藤龍勇
祥伝社 ノン・ノベル 2003/05/20 4-396-20764-6
歌の翼に表紙 〈小説NON〉に連載した連作短編集。
 町の楽器店でピアノを教える杉原亮子先生とその周囲の人たちにまつわるミステリです。
 03年末のミステリ系年間ベストには、幾人かの方が票を投じてくださいました。有り難や。
 MISC.に関連楽曲リストがありますので併せてどうぞ。
▼収録作品▼  1)バイエルとソナチネ 2)英雄と皇帝 3)大きな古時計 4)マイ・ウェイ 5)タランテラ 6)いつか王子様が 7)トロイメライ 8)ラプソディ・イン・ブルー 9)お母さま聞いてちょうだい


末枯れの花守り
すがれのはなもり
\514 智内兄介
角川書店 角川文庫 2002/03/25 4-04-412007-2
末枯れの花守り表紙 スニーカーブックス版の文庫化。
 帯と解説は夢枕獏さん。
 私にとってとても大切な和モノ作品に「泉鏡花」を冠してくださるとは……感涙。


五人姉妹 \1700 中川悠京
早川書房 ハードカバー 2002/01/20 4-15-208394-8
五人姉妹表紙 SF系短篇集。てんでばらばらの作品が入っているぶん、スガヒロエという作家を知っていただくにはちょうどよいのではないかと思っています。アンソロジーや一般文芸誌に掲載されたものが多く収録されていますので、『永遠の森』の各短篇よりはSF度が薄めです。
 カバー見返しや新聞の宣伝に使われた「せつなさの名手」というキャッチコピーは、とても恥ずかしいけど、とても嬉しいのが本心。私が書きたくて書いてきた「SFのカタチ」を、ちゃんとそういうふうに認めてもらえたというのは、とてつもなく幸福なことだと思います。
▼収録作品▼  1)五人姉妹 2)ホールド・ミー・タイト(書き下ろし) 3)KAIGOの夜 4)お代は見てのお帰り(博物館惑星シリーズ余話) 5)夜を駆けるドギー 6)秋祭り 7)賤の小田巻 8)箱の中の猫 9)子供の領分


アイ・アム
I am.
\381 中原達治 
祥伝社 400円文庫 2001/11/10 4-396-32885-0
アイ・アム表紙 150枚ほどのノヴェレッタ。SFファンでない人も楽しんでもらえる近未来SFだと思います。
 ホスピスを併設する病院を舞台にした自分探しのお話。といっても、ソコはソレ、SFですから、自分探しというのは機械のボディを持つ看護人の「私はロボットなの?」という問いかけだったりします。
 担当編集さんはちびっと涙腺を刺激されたとか。「病院が舞台」で泣くか「SF的設定」で泣くかで、主人公のみならずアナタも自分の趣味を再確認するかも。


夜陰譚(やいんたん \1600 装丁・井上佳子
装画・藤原ヨウコウ
光文社 ハードカバー 2001/10/25 4-334-92342-9
夜陰譚表紙 ジャンルはホラーに入ります。けれど自称「幻想小説」を集めた短篇集です。〈女は怖いよ〉的な物語が多いです。
 中でも「蟷螂の月(とうろうのつき)」は、同業者を中心にご好評をいただいています(^-^)
 長年「黒い本」を出したいと思っていました。文句なしのカバーを制作していただけて、とても嬉しいです。
▼収録作品▼  1)夜陰譚 2)つぐない 3)蟷螂の月 4)贈り物 5)和服継承 6)白い手 7)桜湯道成寺 8)雪音 9)美人の湯(書き下ろし)


鬼女の都 \905 藤原ヨウコウ
祥伝社 ノン・ノベル 2001/09/10 4-396-20725-5
鬼女2表紙 ハードカバー版がNONノベルに入りました。
 藤原花奈女のマンションの見取り図を付けましたので、既読の方もどうぞ〜。
 ノベルスに入れるための作業中、担当さんは「よくもこんなに抜けのないものを、と思った。あの頃はお互いによく頑張ったなあ」とおっしゃってくださいました。この作品が書けて本当によかったと改めて思います。


メルサスの少年
「螺旋の街」の物語
\648 磐居広治 
徳間書店 徳間デュアル文庫 2001/01/31 4-19-905031-0
メルサス2表紙 星雲賞日本長篇部門受賞作。
 新潮文庫版が復刊されました。 語句を直す程度の改定をしています。


<柊の僧兵>記 \590 緒方剛志
徳間書店 徳間デュアル文庫 2000/11/30 4-19-905020-5
柊2表紙 ソノラマ版の復刊。
 内容的には大差ありませんが、多少改定しています。


永遠の森 博物館惑星 \1900 菊池健
早川書房 ハードカバー 2000/07/31 4-15-208291-7
永遠の森表紙 ご好評をいただいていて嬉しい限りです。
 ラグランジュ・ポイントにある博物館苑〈アフロディーテ〉を舞台にした連作短篇集。
 SFガジェットと「優しいお話」の融合を目指して書きましたが、皆さんのご感想やいかに。あまりSFを読まない女性読者さんにも気に入っていただけているのが自慢です。
▼収録作品▼  1)天上の調べ聞きうる者 2)この子はだあれ(書き下ろし) 3)夏衣の雪 4)享ける形の手 5)抱擁 6)永遠の森 7)嘘つきな人魚 8)きらきら星 9)ラヴ・ソング
 追記・「ベストSF2000」国内篇第一位第32回星雲賞日本長篇部門、そして第54回日本推理作家協会賞をいだたきました。


末枯れの花守り
すがれのはなもり
\800 波津彬子
角川書店
角川スニーカーブックス
1997/10/25 4-04-788702-1
末枯れの花守り表紙 強いて言えば「和ものファンタジー」の連作短編集。
 人が花に託す思いを利用してそれをコレクションしようとする姫君装束の姉妹と、それを阻止し「花はあるがままに枯れさせるのがよい」とする時実(ときざね)一派の攻防。
 和もの趣味や歌舞伎趣味をてんこ盛りにして、楽しく仕事ができた作品です。クール・ビューティ嗜好の方にもお薦め。
▼収録作品▼ 1)朝顔 2)曼殊沙華 3)寒牡丹 4)山百合 5)老松


鬼女の都
The Spirit of Kyoto
\1748 京極夏彦
祥伝社 ハードカバー 1996/10/20 4-396-63107-3
鬼女の都表紙 初のミステリ長篇。
 同人誌で歴史物を書いていた女性が死んだ。その影には「ミヤコ」と名乗る京都の神髄たる謎の人物の存在が……。
 同人誌のことはあまり知らない私があえてこの設定にしたのは、これまでついてきてくれた読者さんを逃したくなかったからでした。内容的には「SF作家がミステリを書く以上は!」という気持ちで「人ではなく都市が殺人を起こしたのか?」を主題にしました。
 賛否両論吹き荒れる中、「猟奇の鉄人」でベスト1にしていただき、「なまもの!」でもお薦めマークをいただいたのは本当に嬉しかった。


不屈の女神
ゲッツェンディーナー
\544 赤井孝美
角川書店
角川スニーカー文庫
1995/10/01 4-04-412006-4
不屈の女神表紙 今は亡きPCエンジン用ゲームのノベライズ。
 といっても、種々の事情から場面設定以外のほとんどがオリジナルです。
 孤島にさらわれた姫巫女がたった一人で脱出を試みるつれづれに考えます。神とは、王とは、治世とは、幸せとは……。
 亜人間たちの喋り方や亡霊君のキャラクタ設定はいまだに気に入っています。
 もう手に入らないでしょうが、音楽CD(東芝EMI/TYCY−5417)も出ていました。ゲームには出て来ない私のつけた名前や名称……不屈の女神、ミーサ、貴宝珠など……がそのまま曲のタイトルになっていてびっくり。


オルディコスの三使徒3
巨神の春
\583 鈴木雅久
角川書店
角川スニーカー文庫
1995/01/01 4-04-412005-6
オルディコス3表紙 続き物の最終巻の説明はむつかしいですね。
「歌の降る惑星」をお読みになった方がニヤリとするところがあり、クール・ビューティのイシュラーマのダメダメぶりがかえって人気を得た、とだけ申し上げておきましょう。
 作中、ブラウリカが歌う名詞ばかりの歌は、ボサ・ノバの名曲「三月の雨(秋の流れ)」のイメージでした。


オルディコスの三使徒2
紅蓮の絆
\544 鈴木雅久
角川書店
角川スニーカー文庫
1994/07/01 4-04-412004-8
オルディコス2表紙 一巻目からずいぶん間を置いてようやく出せた二巻目。
 タグロットと赫のリハイザがこの本の主役です。
 表紙の色校正時点ではリハイザの胸が丸見えだったけど、正式版ではちゃんと文字で隠されていたという……。


氷結の魂(上下) 各 \757 北見 隆
徳間書店 トクマノベルズ 1994/04/30 4-19-850092-4
4-19-850093-2
氷結の魂表紙 純然たるファンタジーが私に書けるものかどうかに挑んだもの。
 後書きが一部からのバッシングを招いて思わぬ心労の種になったことでも思い出深い作品となりました。
 トクマ・ノベルズ20周年記念作品として刊行されたので、初めて車内吊り広告なるものも経験。
 話の器は、火と地の神と氷と風の魔王の対立、という真っ向勝負の設定。そのキリスト教義的二神対立をアニミズム的に解体すれば多少は私らしくなるかな、と。
 ファンタジーという括りを最大限に利用して、思う存分きららな情景描写ができたのは楽しかった。


暁のビザンティラ(上下) \505
\524
斉藤友子
アスペクト ログアウト冒険文庫 1993/10/22
1993/11/22
4-89366-139-6
4-89366-147-7
ビザンティラ上巻表紙ビザンティラ下巻表紙 SFファンタジー。と自分で言うとアレなんだけれど。
 皇帝の取り決める共生関係の儀式を執り行なえなかった少女カイチスは、謎の女武人ビザンティラと旅をともにする。
 ネタは生物学。特に遺伝子関係。とはいえ、中身は極力キャラクターノベルを目指して書きましたので、その落差をお楽しみくださいマセ。
 ビザンティラの弓を和弓ふうにしたのは、資料を読むのが楽しかったから。詳しいメイキングなどはイラスト集に掲載したのだけれど、きっともう品切れでしょうね。


雨の檻 \447 品川るみ
早川書房 ハヤカワ文庫JA 1993/04/20 4-15-030389-4
雨の檻表紙 憧れのハヤカワ文庫ということもあって、今も大切に思っている短篇集です。
 後書きにも書いたとおり、いろいろなテーマをいろいろな仕掛けで処理した玉手箱(またはガラクタ箱)的な本だと思っています。高校生の時に書いたデビュー作あり、自称「女は怖いよシリーズ」もこの本に端を発しているし、星雲賞日本短篇部門受賞作で英訳もされた「そばかすのフィギュア」も収録しています。
 ぜひぜひ、ご一読を!
▼収録作品▼ 雨の檻/カーマイン・レッド/セピアの迷彩/そばかすのフィギュア/カトレアの真実/お夏清十郎/ブルー・フライト
 あ、そうだ。解説の山岸真さんが「それを知っていたら解説に盛り込んだのに」とおっしゃったことをここで書いておきます。冒頭に掲載したシラーの言葉は、小学生の時に「目標や好きな言葉を書いて机に貼りなさい」と言われた時に選んだもの。今の立場からすると意味深長とも言える言葉ですが……こんなのを机に貼ってるなんてイヤな小学生だったんだなあ、とも。


オルディコスの三使徒1
妖魔の爪
\505 鈴木雅久
角川書店
角川スニーカー文庫
1992/10/01 4-04-412003-X
オルディコス1表紙 SFファンタジー。
 技芸団に入るはずだったブラウリカは彼らの秘密を知り、〈光の楽師〉を探しているという〈香師〉イシュラーマ・〈夢師〉タグロットと行動を共にすることとなる。闇の牙城マヌダハルが化け物を操って人々を混乱に陥れる中、「我もまた混沌のうちにて全き神ならず」と言うオルディコス神は三使徒たちに何をさせようとしているのか。
 この時期、この作品と「氷結の魂」「不屈の女神」と神様モノが続きました。ひそかに「神様三連荘(さんれんちゃん)」と呼び、それぞれ違った解決方法を用意しました。


メルサスの少年
「螺旋の街」の物語
\466 草K琢仁(くさなぎたくひと)
新潮社
新潮文庫ファンタジーノベル・シリーズ
1991/12/20 4-10-121611-8
メルサス1表紙 SFファンタジー。星雲賞日本長篇部門受賞作。
 徳間書店デュアル文庫で2001年1月に復刊
 螺旋の形状をした歓楽の街メルルキサス。清純な〈昼の乙女〉から変態して動物じみた体を持つようになった女たちはパラサ鉱石の採取人たちに春を鬻ぐ。その街に生まれるはずのなかった子供イェノムがいた。大人扱いしてほしいイェノムは、トリネキシア商会の魔手から逃れてきた未来視の少女カレンシアを知り、少しずつ変わっていく。
 あり得ない世界の描写に最大限の努力を払った作品。イメージ伝達に苦しんだけれど、受賞で報われた気持ちです。
 クサナギさんの表紙絵が素晴らしいので、彼の原画展などありましたらぜひ足を運んでください。罅割れ技法に苦心してくださったそうなので、大きな絵で見てほしいんです。


鷺娘 −京の闇舞− \466 いのまたむつみ
朝日ソノラマ ソノラマ文庫 1991/08/30 4-257-76564-X
鷺娘表紙 オカルトもの。SF、とつけ加えてもいいネタも含まれています。
 恋人の美樹から帰郷をなじられた南条は、舞妓の朱鷺絵と出会う。彼女は京都を昔のままの風情にとどめ置こうとする幽界の后・烏珠(ぬばたま)と戦っていた。しかし古き善き「京都」を懐かしむ心は朱鷺絵の中にもある……。
 京都景観問題をオカルトにエクストラポレーションした作品で、スガ作品の中では一番好きだとおっしゃる読者さんも複数あり。このテーマが昂じて「鬼女の都」に進んだと言っても過言ではありません。
 続編(というか、予定では三部作)の用意もありますが、お目にかけられるのはいつのことか。


うたかたの楽園
センチメンタル・センシティヴ・シリーズ
\456 大野安之
角川書店
角川スニーカー文庫
1991/02/01 4-04-412002-1
うたかたの楽園表紙 SSシリーズ第二弾。
 南の島で起きたちょっとしたテロを阻止したナツノと亜美は、束の間のバカンスを楽しんでいた。しかしそこへジャーナリストのマックスが現われ、ナツノの心が乱れる。楽園に思えた島に隠された秘密とは。能力者と普通人が幸せに暮らせる地上の楽園って本当にあるの?――
 作中に出した「ハーゲンダッツのハニーバニラ」アイスクリーム、もう売らないのかなあ。カラメルソースの味がしておいしかったのになあ。


歌の降る惑星(ほし)
センチメンタル・センシティヴ・シリーズ
\417 大野安之
角川書店
角川スニーカー文庫
1990/08/01 4-04-412001-3
歌の降る惑星表紙 SSシリーズ第一弾。コミカルなタッチのSF。
 最強の超能力者と言われるナツノと相方ののーてんき美少女・亜美は、シンシア・コンツェルンの宇宙実験島を舞台に騒動を巻き起こす。AI研究家の女性は、何をよすがに執拗な研究を続けているのか。その謎が解けた時、地球に歌が降り注ぐ。
 山岸真氏が「SFアドベンチャー」誌で「本屋に走れ!」との名言をくださった作品。もう走って行っても店頭にはありませんので念のため。
「おもろうてやがて悲しき」を目指した泣きの入るSF、のつもり。私の話の作り方はここらへんがシュミかも。
 遠慮がちな自慢をすると、この時点でユーラシア大陸の国家体系の解体を(たった一言ですが)描いていました。現中国やEUの姿を見るだにヤマカンが当たって自分でもびっくりですー。


〈柊の僧兵〉記 \447 加藤洋介&後藤啓介
朝日ソノラマ ソノラマ文庫 1989/01/30 4-257-76448-1
柊1表紙 SFファンタジー。
 徳間書店デュアル文庫で復刊されています。
 砂漠の惑星には、ところどころに「聖域」と呼ばれるオアシスがあった。忌み嫌われる「白い子供」のミルンとアジャーナは、謎多き〈柊の僧兵〉たちと共に自分たちの村を潰滅させたハイテクノロジー侵略者ネフトリアに立ち向かう。裏切り者に苦しむ中、過去の〈大虐殺〉の真相は、エイソラージの残した読めない文字に託されていた……。
 気がつかない方がいらっしゃるようなので、あえて蛇足を。ネフトリアは遠い未来の地球そのものがモデルです。だから異世界でも「柊」や「ソーサー・プレイン」などの言葉が使われているのでございます。はい。


ゆらぎの森のシエラ \447 加藤洋介&後藤啓介
朝日ソノラマ ソノラマ文庫 1989/01/30 4-257-76448-1
シエラ表紙 記念すべき長篇デビュー作。ジャンルはSFファンタジー。ネタはやっぱり遺伝子モノ。
 従順な化け物であるはずの「金目」は、ゲテモノ食いのシエラという少女に出会って自我を取り戻す。化け物で世界征服を企むパナードは、人々を煽動して村祭りに龍のリュクティの巨神像を作らせようとしていた。パナードの理想はシエラを撹乱し、彼女を立ち止まらせてしまう。それは遥か過去に起きたことの再現でもあった。
 遠慮でも何でもない自慢、というか、悔しい宣言。作中に出てくる「小さきもの」は、ズバリ、現在で言うところのミームでありました。ドーキンスが話題になった時、どんなに驚いたことか。
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